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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1096号 判決

控訴人 村山彦一郎

被控訴人 新潟地方法務局長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。新潟地方法務局柏崎支局登記官吏が別紙目録記載の不動産についてなした同法務局柏崎支局昭和二十九年四月九日受付第一五五三号所有者の住所変更の付記登記、同日受付第一五五四号抵当権設定登記及び同日受付第一五五八号停止条件付代物弁済契約による所有権移転請求権保全の仮登記につき控訴人がなした異議の申立に対し、昭和三十年七月二日被控訴人のなした右異議申立を棄却する旨の決定はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述並びに証拠の提出援用及び認否は、控訴人において甲第十号証を提出し、乙第一号証の一、同第二号証の一、二、六、同第三号証の一、二の成立は不知、同第一号証の二、同第二、第三号証の各三は、控訴人名下の印影の真正なことを認め、その他の部分の成立は不知、その他の乙号各証の成立を認めると述べ、被控訴人指定代理人において乙第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし六、第三号証の一ないし四を提出し、甲第十号証の成立を認めると述べたほかは、原判決事実摘示の記載と同一であるから、これをここに引用する。

理由

当裁判所は、当審において新たに提出援用されたすべての証拠を参酌しても、次の点を付加するほかは、原判決がその理由中で説示したところと同じ理由によつて、被控訴人が控訴人の異議申立を棄却した行政処分は適法なものと判断するから、ここに原判決の理由の記載を引用する。

付加する点は、次のとおりである。

一、本件各登記申請が不動産登記法及び同法施行規則に定める形式上の要件を具備することは、管轄登記所からの送付に係る本件各登記の申請書及び付属書類である乙号各証によつて明らかである。(乙号各証中にはその成立につき争のあるものがあるけれども、登記申請が形式上の要件を具備するか否かは、当該申請書及び付属書類の形式だけで判断すべきものであるから、これらの書類により、本件各登記申請が形式上の要件を具備するものと認められる以上、更に進んで他の証拠等によつて申請書その他の書類の成立の真正を認定する必要はない。)

二、不動産登記法第百五十条以下の規定は、登記官吏の処分が不当な場合の救済を定めたものではあるけれども、法務局又は地方法務局の長に、異議についての決定において、本来登記法上登記官吏に許されない処分を命ずる権限を与えたものとは解せられない。そうして、登記申請書が偽造であることは同法第四十九条第一号又は第二号に該当しないから、仮に控訴人主張のように本件各登記申請が第三者の偽造した申請書に基いてなされたものとしても、すでに右登記が完了している以上、登記官吏において同法第百四十九条ノ二以下の規定により職権でこれを抹消することはできない。従つて異議を決定する機関である被控訴人において控訴人からの右登記を抹消すべき旨の異議申立により、登記官吏にその抹消を命ずる余地は全く存しないのであつて、その抹消是正を求める控訴人の異議申立は、この点から考えても理由がないことが明らかであり、これを棄却した被控訴人の処分は適法である。

以上の次第であるから、控訴人の異議申立を棄却した被控訴人の決定の取消を求める本件請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条により本件控訴を棄却すべきものとし、控訴費用の負担につき同法第九十五条、第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 斎藤直一 坂本謁夫 小沢文雄)

目録

柏崎市大字枇杷島字諏訪田百八十二番二

一、宅地 百五十五坪

同所百八十二番十二

一、宅地 八十三坪五合七勺

同所百八十二番二

家屋番号 枇杷島二十二番

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建居宅 一棟

建坪 三十坪七合五勺

附属建物

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建物置 一棟

建坪 二十九坪

同所百八十二番十二

一、建物番号第一号

家屋番号 枇杷島二十番

一、木造瓦葺二階建居宅 一棟

建坪 八坪八合九勺

外二階 八坪

同所百八十二番二

建物番号 第一号

家屋番号 枇杷島二十一番

一、木造瓦葺二階建店舗 一棟

建坪 五十二坪五合

外二階 十五坪

付属建物

一、土蔵造瓦葺平家建倉庫 一棟

建坪 二十四坪五合

一、木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建物置 一棟

建坪 十四坪五合

一、土蔵造瓦葺二階建居宅 一棟

建坪 五坪

外二階 五坪

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